CONCEPT

「だれでも映画を撮れる時代の幕が開く」

《MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)》はクリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクトです。年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した、自由で新しい映画製作に挑戦します。

“変化”をテーマとした36名の監督による短編映画を4シーズンに渡りオムニバス形式で公開。初監督多数、俳優、漫画家、ミュージシャンらが参加し、一般公募枠の12作品は、419作品の応募から選抜されました。映画祭の開催ほか、多様な作品を多様な形で国内外に届けていきます。

監督:Azumi Hasegawa/阿部進之介/安藤政信/井樫彩/池田エライザ/枝優花/GAZEBO/紀里谷和明/Ken Shinozaki/駒谷揚/齊藤工/志尊淳/柴咲コウ/柴田有麿/武正晴/西遼太郎/野﨑浩貴/花田陵/林隆行/針生悠伺/福永壮志/藤井道人/藤原知之/真壁勇樹/松居大悟/三島有紀子/水川あさみ/三吉彩花/村岡哲至/村上リ子/ムロツヨシ/山下敦弘/山田佳奈/山田孝之/李闘士男/渡辺大知 (五十音順)

全国の地域と連携した制作支援や上映会、ワークショップと連動することで、だれでも参加できる参加型プロジェクトを目指します。

INTERVIEW

伊藤主税(MIRRORLIAR FILMS プロデューサー)インタビュー

ーー最初に、改めて『MIRRORLIAR FILMS』の企画意図を教えてください。

僕たちはもともと、役者を目指す人にオーディション情報を提供したり、俳優向けの情報プラットフォームである「MIRRORLIAR」というサービスを運営していて。その中で、一人の俳優が自分で映画を撮って送ってきてくれたことから着想を得ました。プロデューサー、俳優、監督……と区切られていて、監督しか映画を作れないというのは変じゃないかとよく仲間たちと話していて。職業や肩書き関係なく、もっと気軽に映画が撮れる時代になったらいいなと思っていたこともあり、企画として動き始めました。

ーーいろんな人が映画を撮るきっかけを作りたかったと。

はい。あとは映画の興行収入についてもずっと考えていて。コロナ禍になって、今の日本の年間の映画の興行収入は2千億円くらい。今はそれを取り合っている状況だと思うんですけど、取り合うんじゃなくて、全体を少しでも増やすべき。そのために、映画に関する当事者を増やすことが大事なんじゃないかと思いました。映画作りに参加して、映画に興味を持ったり、映画館に足を運んだり。そういう考えの人が少しでも増えたらいいなという想いもありました。

ーー今回は公募枠も設けられました。伊藤さんは公募作品の審査員も務められましたが、公募作品にはどのような印象を受けましたか?

集まっても200本くらいかなと予測していたのですが、実際は419作品、想像の倍以上が集まって。映画を撮りたいと思っている人がこんなにいたんだということに驚きました。選考からは漏れてしまいましたが、フィリピンの日本語学校の生徒たちが先生と一緒に日本語で映画を作ってくれたり、高校生たちが学校をあげて作ってくれたりしたものもあって。あとはYouTuberの方々も多かったんですよ。映画というものに対してすごくリスペクトを持って作品作りをしてくれていて。総じて、本当にいろんな人がチャレンジしてくれてうれしかったです。希望や可能性を感じたし、日本にはまだまだいろんな才能が多く眠っているんだなと感じました。

ーー『MIRRORLIAR FILMS』は4シーズン、1年かけて公開されます。このうち、2021年9月に公開された『MIRRORLIAR FILMS Season1』はどのような作品になったと思いますか?

オムニバス形式なので、小さくまとまって「わかりやすくて面白かった」というものを作るのは、言ってしまうと簡単だと思っていて。「Season1」はそうじゃなくて、「ここまでやっちゃっていいんだ」「映画は自由なんだ」と示せるようなものにしたいと思っていたんです。それができたかなと思っています。芸術が爆発しすぎていて、プロデューサーとしては少し心配な面もありますが(笑)。そういう幅の広さも含めて、1年通してプロデュースできるのは面白いなと思っています。

ーー公開後の反応も含めて、プロジェクトの手応えはありますか?

ありますね。例えば『無題』(藤原知之監督作)に出演している奥村心結さんは、部活で映画を作ることにしたそうで。想いを受け取ってもらえた気がしてうれしかったですね。ほかにもフィルムコミッションを作ることに決めた地域や、映画館を作る計画が始まった地域などもあって。展開がすごく広がっています。

ーーちなみに「Season2」以降はどのような作品になっているんでしょうか?

「Season2」はクオリティの追求はもちろん、選定監督作品もバランスが取れていて、「短編って面白い!」「短編ってすごい!」と思ってもらえるような作品になっていると思います。「Season2」もぜひ楽しみしていてください。

ーー2021年10月に公開された短編映画プロジェクト『DIVOC-12』も伊藤さんがプロデュースを手掛けた企画です。こちらは「新型コロナウイルス感染症の影響を受けているクリエイター、制作スタッフ、俳優が継続的に創作活動に取り組めることを目的とした、12人の映画監督と12本の短編からなるオムニバス映画を制作するプロジェクト」とありますが、『DIVOC-12』の企画の経緯を教えていただけますか?

僕の中では『MIRRORLIAR FILMS』と『DIVOC-12』は兄弟的な立ち位置で。というのも、『MIRRORLIAR FILMS』は“映画を撮ってみよう”ということをテーマに掲げた企画で、この記者会見を2020年の4月にやる予定だったんです。でもコロナ禍真っ只中で、「映画を撮ろう」なんて全然言えない雰囲気だった。「映画は必要ないんじゃないか」という風潮が出てきて、映画の関わるクリエイターたちも「撮っていいのか」と悩んで。僕は映画を作る仕事をしている以上、この状況をなんとかしなきゃと思っていたんです。そして「やっぱり映画を撮るのをやめてはいけない」と思った。コロナ禍でもできることにチャレンジしないと、『MIRRORLIAR FILMS』も発表できないし、全体的に危ない。そんなときに昔、藤井道人監督たちと10人に満たないくらいの少人数で映画を作っていたことを思い出して。少人数でも映画は撮れると。そこで企画したのが『DIVOC-12』です。

ーー動いてみて、いかがでしたか?

めちゃくちゃ良かったです。「クリエイティブを止めない」と宣言できたことが僕の中で大きかったし、この企画に藤井監督と上田慎一郎監督と三島有紀子監督が参加してくれたのも大きかった。この企画でもクリエイターと俳優の一部を公募していたのですが、若い方のチャンスになれたこともよかったです。僕としては『DIVOC-12』の企画が通ったことで、ようやく“映画を撮ろう”という『MIRRORLIAR FILMS』も発表できて。

ーー『DIVOC-12』が動き出したことで、伊藤さんの背中も押されたと。

完全にそうですね。一方で、映画館のある地域とない地域での文化格差を感じるきっかけにもなって。映画館がない場所でも映画を観られる状況を作れないかなと、今いろいろ考えているところです。

ーー「映画館のない地域でも映画を観られるように」という話も出ましたが、最後に、伊藤さんが『MIRRORLIAR FILMS』『DIVOC-12』を通じて伝えたかったこと、映画人として、今後やるべきだと考えていることを教えてください。

映画の“当事者”を増やして興行収入を少しでも増やすこと、映画を通じて自己表現をする人を増やすこと。それから一番思っているのは……今って映画を作るには、プロデュース部、宣伝部、制作部、俳優部とわかれていて、実は一丸になるのが難しいんです。僕たちは “映画作り”というプロジェクトに対して、監督・俳優・スタッフが一丸になって動くという状況を作りたいと考えています。そのために、今回『MIRRORLIAR FILMS』でやっているのが、売上の分配です。映画を製作する際、制作費と俳優やスタッフへのギャランティをお渡しするという形が、現状最もスタンダードな形ですが、売上に伴ってロイヤリティをお渡しできるシステムを確立させたくて。『MIRRORLIAR FILMS』では総制作費を下げさせていただいて、そのかわり興行収入や二次使用料などでリクープ後の1次収入の20%、2次収入の10%をトップオフで分配していくという方法を取っています。そうすることで、皆さんももっと宣伝にも力が入るだろうし、部署の垣根を超えて一丸となって映画公開に向かうことができると思うんです。その結果、興行収入も増えていく。「このやり方がすごいですね」ということではなくて、これが映画業界の当たり前になってほしい。それが映画業界の未来にとって、プラスになっていくと信じています。

STAFF

プロデューサー

阿部 進之介

1982年生まれ。大阪府出身。2003年に「ラヴァーズ・キス」で映画デビュー。近年の出演映画に『信長協奏曲』、『栞』(榊原有佑)、『キングダム』(佐藤信介)、『新解釈・三國志』(福田雄一)、『るろうに剣心 最終章 The Final』(大友啓史)など。『デイアンドナイト』(藤井道人)では企画・原案・主演を務めた。

プロデューサー

伊藤 主税

1978年生まれ、愛知県出身。and pictures代表取締役。プロデューサーとして『青の帰り道』『デイアンドナイト』『Daughters』『ゾッキ』などを手掛ける。藤井道人・上田慎一郎・三島有紀子らが参加する短編映画製作プロジェクト『DIVOC-12』の公開も控える。映画製作をきっかけとした地域活性化や、俳優向けワークショップで映画産業の発展を目指す。

プロデューサー

関根 佑介

1982年生まれ。東京都出身。学生時代からエンタメ領域に関わるWEBサービスの企画と設計を担当し、今まで作ったアプリケーションが全世界累計DL数7,500万DL超えを記録し、様々な賞を獲得。起業後はアーティスト向けの「CHEERZ」やオーディションプラットフォーム「Exam」など業界最大規模のシェアを誇るサービスを複数運営するなど、様々な業界の課題に対してデジタルという側面から解決していくことを生きがいに活動している。

プロデューサー

松田 一輝

1981年生まれ、愛知県出身。企画、プロデュース、キャスティング業務を主軸に企業CMやMVなどの製作も行う。最近では、Z世代のクリエイターを中心としたクリエイティブに注力している。「MIRRORLIAR FILMS」プロデュースメンバーの一人として、より映画が身近になり、様々な垣根や世代を超えて良い作品が生まれる環境、仕組み作り、世界中の人に作品が届くプロジェクトを目指している。

プロデューサー

山田 孝之

1983 年生まれ、鹿児島県出身。1999 年に俳優デビュー。2004 年「世界の中心で、愛をさけぶ」で主演を務め、第42回ザテレビジョンドラマアカデミー賞で主演男優賞を受賞。2005 年に映画『電車男』で主演を務め、社会現象に。また、映画『デイアンドナイト』『ゾッキ』ではプロデュース、ドラマ「聖おにいさん」では製作総指揮を務めるほかミュージカル出演などその活動は多岐にわたる。